貯蔵物質として細胞内に蓄えられる脂質で,植物では種子にトリアシルグリセロールの形で集積する.デンプンを貯蔵する植物細胞では,貯蔵脂質はほとんどみられない.たとえば,イネ種子では胚やアリューロン層の貯蔵物質は脂質であるが,胚乳細胞ではデンプンが集積する.発芽時にはリパーゼの作用により脂肪酸とグリセロールに加水分解され,脂肪酸はグリオキシソームのβ酸化によってエネルギー源となり,アセチルCoAにまで代謝される.さらに糖に変換されて他の組織に転流する.貯蔵脂質には,ラウリン酸のような中鎖脂肪酸(ヤシ),エルシン酸のような極長鎖脂肪酸(ナタネ),リシノール酸のようなヒドロキシ脂肪酸(ヒマ)など,膜脂質にはみられない特徴的な脂肪酸をもった植物種が広く分布する.ワックスエステルを貯蔵脂質とする植物(ホホバ)もある.