NADP-リンゴ酸酵素[NADP-malic enzyme]

 系統名は,リンゴ酸:NADP+ オキシドレダクターゼ (オキザロ酢酸脱炭酸)(EC 1.1.1.40.). 次の反応を触媒する.
 リンゴ酸+NADP+⇔ピルビン酸+CO2+NADPH
 一般には,細胞質に局在する酵素で,ミトコンドリアに由来するリンゴ酸を酸化的に脱炭酸することで,細胞質にNADPHを供給する.多くの植物では,これから進化したと考えられる色素体型酵素が存在し,非光合成組織の色素体に還元力や,脂肪酸合成・糖新生系への炭素源を供給している.サブユニットの分子量は約7.2万である.ヒト酵素の結晶構造が示されている.http://www.rcsb.org/pdb/explore/explore.do?structureId=3WJA 
 トウモロコシ,サトウキビなどのNADP-ME型C4植物では,この色素体型酵素が維管束鞘細胞葉緑体(光化学系Ⅱの活性が低く,還元力の供給が不十分である)に高発現して,C4化合物 脱炭酸酵素として働いており,CO2に加え,還元的ペントースリン酸回路の作動に必要な還元力の一部を供給している.分子量約6.3万のサブユニットのホモ二量体(低活性型),あるいは四量体(高活性型)として存在する.このオリゴマー間の変換はpHに依存しているので,光照射に伴うストロマのアルカリ化に依存して活性化(四量体への変換)が起こることが示唆されている.また,この酵素の活性は, NADPHにより阻害されるので,葉緑体内のNADPH/NADP+比によっても調節を受けると考えられる(試験管内では還元剤がなくても活性はあるが,チオレドキシン系による還元で活性化を受ける可能性も考えられている).


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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:40