シトクロムb6f複合体および光合成細菌のシトクロムbc1複合体に存在する酸化還元電位の高い二鉄-二硫黄型の鉄硫黄クラスターのことをさす,中性での酸化還元電位は+ 280 mV で,還元型はg=1.89~1.90のEPRシグナルを与える.ミトコンドリアの相同なタンパク質複合体であるシトクロムbc1複合体において最初にRieskeらによって記述されたことから,リスケ鉄硫黄クラスター,リスケ鉄硫黄センター,リスケクラスター,リスケセンターなどと呼ばれている.
分子量約1.9万のアポリスケタンパク質が,システインとヒスチジンの二残基ずつを介して,[2Fe-2S]型の鉄硫黄クラスターに配位結合している.複合体のチラコイド膜内腔側(光合成細菌の場合は細胞質の反対側)に位置し,還元型のキノン(キノール)により一電子還元される.還元型の鉄硫黄クラスターはシトクロムf(光合成細菌の場合はシトクロムc1)を還元する.電子はシトクロムfからプラストシアニン(またはシトクロムc6)を介して光化学系Ⅰに伝達される.
シトクロムbc1複合体のX線結晶構造解析から,リスケタンパク質はシトクロムbのキノール結合部位とシトクロムfまたはシトクロムc1の間を揺れ動くことで,それぞれの電子伝達経路のスイッチングを行っていることが示唆されている.キノール酸化の阻害剤であるDBMIBを添加するとEPRシグナルのg値がシフトすることから, DBMIBの結合位置がリスケ鉄硫黄クラスターのごく近傍であることが予想されていた.