葉緑体RNAの翻訳[translation of chloroplast RNA]

  葉緑体の翻訳装置を構成するリボソーム,rRNAやtRNAなどの成分は,大腸菌やシアノバクテリアのものと似ている.大腸菌ではほとんどすべてのmRNAの翻訳開始コドンから5~9ヌクレオチド上流にShine-Dalgarno (SD)配列GGAGGが存在し,この配列と16S rRNA の3'末端配列との相互作用が正確な翻訳開始部位の認識に重要である.タバコの葉緑体ゲノム上の79種のタンパク質遺伝子のうち,30遺伝子には翻訳開始コドン上流20ヌクレオチド以内にSD配列がまったく存在しない.その代わりに遺伝子特異的な翻訳シス配列が存在する.たとえば,タバコのpsbA mRNA の5'非翻訳配列内には3個所の翻訳開始に必要なシス配列(RBP1, RBP2, AUボックス)がある.AUボックスに結合するトランス因子が葉緑体に存在する.またクラミドモナスでは,psbA mRNA の非翻訳領域に特異的に結合するRNA結合タンパク質がレドックス制御を受けて翻訳開始を調節している.
 葉緑体内では, RNAプロセシングと翻訳は隔壁のない同一空間で行われるため, RNAプロセシングが翻訳に直接,影響を与えている場合がある.トウモロコシのpetB-petD mRNA前駆体のシストロン間で切断が起こった後で,petD mRNAの翻訳が可能となる.タバコのpsaC-ndhD mRNA前駆体がシストロン間で切断されてはじめてpsaCndhDがそれぞれ翻訳される. RNAエディティングによって翻訳開始が制御されている遺伝子(rpl2, psbL, ndhDなど)もある.このように,葉緑体には独自の翻訳制御機構が存在するが,その詳しい分子メカニズムの解明はこれからである.

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Last-modified: 2015-03-23 (月) 16:36:54 (1771d)

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