直線偏光で励起された分子であっても,蛍光の偏光性を保つことができない場合がある.それは, (1)高いエネルギー状態に励起され,内部転換によって蛍光を発する第一励起準位まで緩和する間に,遷移モーメントの方向が変化するとき, (2)蛍光寿命の間にブラウン運動によって分子の配向性が変化するとき, (3)励起された分子がそのエネルギーを他の分子に渡し,蛍光が二次的に励起された分子から発光されるとき,などである.こうした原因によって蛍光の偏光性が失われることを偏光解消という.(1), (2)は分子の内在的な要因により, (3)は分子間の要因による.これらの要因が重なる場合,偏光解消の度合は,それぞれの要因による解消度の積として表される.光合成の研究においては, (3)のエネルギー移動による偏光解消を使って,光合成色素系でのエネルギー移動過程や移動時間,また色素の空間的な配向などの測定が行われることが多い.