メバロン酸を経由しない,イソペンテニルピロリン酸(IPP)の合成経路.1990年代に発見され,ようやく生合成経路が確定し,酵素や遺伝子も判明した.デオキシキシルロースリン酸経路(deoxyxylulose-phosphate pathway, DOXP pathway)とも呼ばれる.ピルビン酸が脱炭酸,活性化され,グリセルアルデヒド-3-リン酸と縮合して1-デオキシキシルロース-5-リン酸がつくられ,さらに複数の反応によって炭素数5個のIPPになる.これからイソプレンを構成単位とした種々の化合物が合成される.シアノバクテリア,紅色細菌,緑色硫黄細菌,ヘリオバクテリア,一部の真正細菌などに分布する.陸上植物や藻類では色素体に局在し,カロテノイドやフィトール,テルペン類,プラストキノンなどの合成の基質を供給する.出発物質のグリセルアルデヒド-3-リン酸は光合成の中間代謝物であり,またピルビン酸はグリセルアルデヒド-3-リン酸から色素体内で合成される.一方,陸上植物や藻類では細胞質には別の経路であるメバロン酸経路が局在している.例外的に,ある種の緑藻は非メバロン酸経路のみ,ユーグレナ植物はメバロン酸経路のみもつ.