CAMはCrassulacean Acid Metabolism (ベンケイソウ型有機酸代謝)の略で,CAM型光合成を行う植物をCAM植物と呼ぶ.CAMはベンケイソウ科植物に限らず多くの植物にみられる代謝であるが,19世紀にベンケイソウ科植物の葉で酸含量が夜間に増し昼間に消失する現象が,この科の植物に特有な代謝として認識・研究されたことに由来して慣用的に用いられる.CAM植物はシダ植物3科5属,裸子植物1科1属,単子葉植物8科98属,双子葉植物33科239属に分布し,ラン科での推定種数7,000種を含め約16,000種にみられる.この数は地球上の維管束植物の約6%に相当する.このように多数の植物にみられるCAMの進化は,環境条件によって誘発された収斂進化によるものと考えられている.CAM植物はCAM型光合成という生理機能と多汁性という形態学的特性を併せもつことから,砂漠や着生環境などの水分ストレスの多発する環境下で生育する植物に多くみられる.従来, CAM植物のバイオマス生産力はきわめて低いとされてきたが,適切な農業的管理下ではC3植物をしのぎ,C4植物に次ぐ高い能力を示す種がある.なお,常にある一定程度のCAM型光合成を示すものをobligate CAM plant (偏性CAM植物),ある要因によりC3光合成からCAM型光合成に切り替わるものをfacultative CAM plant (通性CAM植物)と呼ぶ.