炭素原子に酸素原子が2つ二重結合した無色の気体.CとOの結合距離が約1.16Åの直鎖状分子である.分子量は44.01,凝固温度は-78.50℃.水中にも溶存して存在しCO2(aq)と表される.これは通常,水和した形(H2CO3)と合わせてしばしばH2CO3*と表記される.H2CO3*は不揮発酸であり,遍く存在して自然界の塩基成分と反応するため,自然水のpHの重要な決定因子の一つである.ヘンリーの法則に従ってlog[H2CO3*]= logKH + log|[pCO2]の関係式が成り立ち,25℃におけるpKHの値はおよそ1.47である.したがって,現大気レベルCO2 (2002年現在,約0.037%)において,[H2CO3*]=1.25×10-5(M)と計算される.また,重炭酸イオンとプロトンとの平衡状態は,H2CO3→HCO3- + H+(常温のpKa=6.35)と表される.
CO2は緑色植物,シアノバクテリア類,および藻類などの光合成独立栄養生物体内で還元的ペントースリン酸回路のリブロースビスリン酸カルボキラーゼ/オキシゲナーゼ(Rubisco)のカルボキシラーゼ反応により固定されるが,これとは異なるCO2が,活性中心のリジン残基をカルバミル化し,2価金属イオンを配位することによりRubisco を活性化する働きももつ.この他に,一部の細菌類では,ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼやピルビン酸合成酵素などによってもCO2は生物的に固定される. C4植物や,シアノバクテリア類,微細藻類などの生物群では,光合成への無機炭素供給過程として, CO2が細胞内に濃縮されることがわかっている.細胞へのCO2の浸入様式として疎水性による細胞膜の拡散的通過,および水チャネルの無極性分子の経路が考えられる.また,シアノバクテリア類や微細藻類ではCO2および重炭酸イオン(HCO3-)の能動輸送が知られている. CO2は地球表面から赤外線として放射される熱を吸収し,その一部を再び地表に向けて放射して地表面や下層大気を加熱する,いわゆる温室効果を有するため,地球温暖化の重要な要因として注目されている.