LHCI(Light-hervesting complex I)と略称される.光化学系Ⅰ複合体の周辺部に存在し,クロロフィル,カロテノイド,脂質を結合したタンパク質である.陸上植物,藻類に存在し,シアノバクテリアには存在しない.陸上植物のLHCIはLhca1からLhca4まで,21~24 kDa の大きさをもつ4種類のサブユニットから成る.各サブユニットは膜貫通領域として3本のαヘリックス構造をもつ互いに相同な膜内在性タンパク質であり,クロロフィルaとbを約14分子,β-カロテンとルテインなどのキサントフィルを数分子結合している.しかし,紅藻のLHCIにはクロロフィルbは存在しない.β-カロテンを結合する点は,光化学系Ⅱアンテナ色素タンパク質複合体(LHCII)と異なる.陸上植物の光化学系Ⅰ複合体にはLhca1からLhca4がそれぞれ1コピーずつ結合する.1個のP700当たりにして,LHCI全体として80~120分子のクロロフィルaとb (Chl a/b=約3.5)を結合しており,その吸収スペクトルから, LHCI-680 (680 nm に吸収極大を示す成分)とLHCI-730 (705~710 nm に吸収極大を示し,液体窒素温度で730~740 nm 付近に蛍光発光極大を示す成分)(→光化学系Ⅰの長波長蛍光)に分けることができる.LHCI-680はLhca2とLhca3の二量体から成り, LHCI-730はLhca1とLhca4から成る二量体である.Lhca5とLhca6が微量存在し,光化学系Ⅰ複合体とNDH複合体から構成される超分子複合体に結合している.藻類にはより多くのLHCIが存在し,緑藻のクラミドモナスの光化学系Ⅰには9種のLHCI(Lhca1からLhca9)がほぼ1コピーずつ結合する.吸収した光エネルギーは光化学系Ⅰ反応中心コアタンパク質に結合しているアンテナ色素に伝達される.(→光化学系Ⅱアンテナ色素タンパク質複合体,Lhca遺伝子)