葉緑体には2,000~3,000種ものタンパク質が局在していると推定されているが,葉緑体自身のゲノムがもつ遺伝子はわずか100種ほどにすぎず,葉緑体タンパク質の大部分は核ゲノムにコードされている.このため,葉緑体の形成には,核ゲノムと葉緑体ゲノムにコードされている遺伝子群の協調的な発現が必要である.核にコードされているタンパク質は,細胞質で前駆体として翻訳された後,葉緑体へ輸送される.核は葉緑体遺伝子の転写や転写後制御に必要な因子の供給を通じて葉緑体ゲノムの機能をコントロールしている.一方,核にコードされている光合成遺伝子が発現するためには葉緑体から核へ伝達されるシグナルも必要であり,これは葉緑体シグナルと呼ばれている.高等植物では,分裂組織や黄化組織が光合成組織へ分化する過程でプロプラスチドやエチオプラストが葉緑体に分化するが,この過程は,光などの環境シグナルによっても制御されている.