NADP-リンゴ酸デヒドロゲナーゼ[NADP-malate dehydrogenase]

  系統名は,リンゴ酸:NADP+ オキシドレダクターゼ(EC 1.1.1.82.). 次の反応を触媒する酵素.
 オキサロ酢酸+NADPH⇔リンゴ酸+NADP+
 色素体に局在する酵索で,分子量約4.2万のホモ二量体.ミトコンドリアに局在するクエン酸回路のNAD-リンゴ酸デヒドロゲナーゼや,細胞質のそれと異なり, NADP+に特異的である.暗所ではほとんど活性がなく,チオレドキシン系で還元を受けて活性化される代表的な酵素である.その活性化はNADP+により阻害される.N末端およびC末端部分に含まれる2組のシステイン残基のペアが,酸化型(不活性型)ではそれぞれジスルフィド結合をつくっているが,チオレドキシンによる還元に伴いジチオール型となり,活性化する.NAD-リンゴ酸デヒドロゲナーゼから進化したと考えられるが,光合成真核生物の系統が分化した際に色素体に局在化したこの酵素は,緑藻および高等植物の系統で,N末端およびC末端に20~40アミノ酸から成る配列が付加され,上記のような光-チオレドキシン系による活性制御機構を得たと考えられている.暗所での活性は非常に低く,光合成条件下(定常状態)では,最大活性の15~90%の活性を示し, NADP+プールの還元状態を一定範囲(0.35~0.7)に保つように働いているとされる. NADP+が過還元となると,蓄積したリンゴ酸が細胞質のオキサロ酢酸などと交換輸送され,細胞質のNAD-リンゴ酸デヒドロゲナーゼによって還元されることで,葉緑体ストロマから細胞質へ還元力が輸送される.このしくみをリンゴ酸バルブ(その実体はリンゴ酸-アスパラギン酸シャトルリンゴ酸-オキサロ酢酸シャトルである)と呼び,葉緑体の中で生成するATPとNADPHの比を調節する機構の一つとなっている(同様な生理的意味をもつ機構として,他に,循環的光リン酸化反応メーラー反応がある).C4植物,とりわけNADP-ME型C4植物では,C4化合物 のオキサロ酢酸をリンゴ酸に還元するため葉肉細胞葉緑体で高発現しており,C3植物の10倍程度の活性を示す.
 ソルガムから単離された酵素の酸化型の結晶構造が示されている.http://www.rcsb.org/pdb/explore/explore.do?structureId=7MDH
 

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:46:14