クロロソーム[chlorosome]

  緑色硫黄細菌繊維状非酸素発生型光合成細菌,および,クロラシドバクテリウムAcidobacteria門に属する新規の光合成細菌)における独特の周辺集光装置で,主要部分がタンパク質なしに構造を形成し機能をもつという特異な生体構造物である.細胞膜の内側に付着した~70—180 nm の長径の脂質一重層膜に覆われた楕円体状構造で,バクテリオクロロフィルcdまたはeを多量に含み,微弱光の捕獲に適応している.捕獲された光エネルギーはバクテリオクロロフィルaを含むベースプレートと呼ばれる構造を介して細胞膜中の反応中心へ伝達されていると考えられるが,緑色硫黄細菌ではベースプレートと反応中心の間にさらにFMOタンパク質が存在する.クロロソームの単離標品はSCN-などのカオトロピックイオン存在下で菌体を破砕することによりベースプレートをもつ形で得られる.クロロソームは,バクテリオクロロフィル cをもつ種では740~750 nmに,バクテリオクロロフィルdeをもつ種ではそれぞれ725~735 nm,710~720 nm付近に最長吸収極大(Qyバンド)を示すが,いずれも対応するバクテリオクロロフィルの単分子状態のQyバンドより大きく長波長側ヘシフトしており,クロロソーム中では複数のバクテリオクロロフィル分子が強い相互作用をもつ状態で存在していることを示している.
 クロロソーム内部にはバクテリオクロロフィル cdまたはeが自己会合体を形成している.その自己会合体の構造はロッド状であると考えられてきたが, ラメラー構造やシートロール構造というモデルも提唱とされており, 詳細は明らかでない.クロロソームには数種のタンパク質成分(Csm)が存在するが, これらはバクテリオクロロフィルの自己会合体形成には関与してないと考えられる. Csmタンパク質のうち, ベースプレートのバクテリオクロロフィルa結合タンパク質であるCsmAは, 緑色硫黄細菌, 繊維状非酸素発生型光合成細菌およびクロラシドバクテリウムが共通してもち, 自己会合体からの光エネルギーの集光部となっている。緑色硫黄細菌においては, CsmAを含めた10種類のCsmタンパク質が確認されているが(CsmB, C, D, E, F, G, H, I, J, X), そのほとんどの機能は不明である。CsmIとCsmJは後述の励起バクテリオクロロフィルの解消に関わる. クロロソームの外部を形成している脂質一重層膜は, ラムノシルガラクトシルジアシルグリセロールやモノガラクトシルジアシルグリセロールといった糖脂質が主成分であるが, ホスファチジルグリセロールやアミノグリコスフィンゴリピッドなども含む. またクロロソームはγ-カロテンクロロバクテンなどのカロテン類,クロロビウムキノンなどのキノン類も含まれるが,これらの存在状態についても不明点が多い. 機能としては光障害の防止に役立つと考えられる.緑色硫黄細菌ではクロロソーム中の酸化型クロロビウムキノンはバクテリオクロロフィルの励起状態を解消することで,酸素存在下における光障害の防止を行うと目されている.
 緑色硫黄細菌のモデル生物であるChlorobaculum tepidumにおいて,1つの細胞につき200—250個のクロロソームをもつと見積もられている.また、1つのクロロソームあたり,150—200分子のFMOタンパク質(トライマー)と25-40分子の反応中心(ホモダイマー)が結合していると算出されている.多くの種のクロロソームにおいて、その内部に50,000—250,000分子のバクテリオクロロフィルcd またはeが含まれていると見積もられている.

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Last-modified: 2020-05-12 (火) 04:43:17